静岡県島田市の金谷地区で18年近く無農薬でお茶の栽培を続けている、「お茶畑からこんにちは!」の無農薬茶の杉本園、代表の杉本芳樹さんをご紹介します。
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杉本園の畑と、当主杉本芳樹さん |
「お茶畑からこんにちは!」の杉本園、代表の杉本芳樹さんは、慣行栽培の茶畑が広がる静岡県島田市の金谷地区で、18年近く無農薬でお茶の栽培をしています。
お茶の木の根っこや芯の木を太くたくましく育てるため、農薬はもちろん肥料も与えず、水さえも一切与えません。自然のままにお茶を育て、美味しいお茶をご家族の皆さんで作っています。
その中でも夏場の草取りは大変な重労働と伺い、少しでもお手伝いになればと、2009年と今年の7月に伺いました。
人間が歩けるお茶畑のヒミツ
静岡の茶畑の栽培でメインとなっているのが、大地に肥料のポンプを這わせ、お茶の木の根が15cm〜20cm延びたところに丁度肥料や水が行くようなシステム。お茶の木に何かあればすぐに肥料で対応できるようになっています。また、茶畑の間は刈り取りの機械さえ入ればいいので、扇形のような形、つまり機械の形どおりにみっちりと生い茂ったお茶の木がいわゆる普通の茶畑のイメージになっています。
最初に杉本さんに案内されたのは、その通常のお茶畑と向かい合わせた畑でした。みっちりとした通常の茶畑と違い、杉本園のお茶の木は、自由に生えている感じ。また、木と木の間に通路も悠々とあります。お茶の葉の色も緑が濃く見えました。
畑に着くなりおもむろに、お茶の木と木の間に入ってしゃがみこむ杉本さん。
「こうしてしゃがんでみるとわかりますよ。うちの畑は木の根元から向こうが見えます。普通の茶畑は枝がびっしり生えているから、人も入れないし向うが見える状態でない。空気・太陽が十分に行渡りません。だからお茶の木が貧弱に育ち、薬が必要になってしまう。
うちの木はまったく真逆の栽培だから、お茶の木が育とう育とうとして太陽や大地の力を自ら得ようとします。そうするととっても芯が太くなって、結果お茶の葉が立派に育つんです。」
私達は杉本さんと同じようにしゃがもうと、畑に足を踏み入れて驚きました。足元の土がふかふかなで、うまく歩け無いほどです。
「普通の畑は機械を入れるから、その重さでガチガチになってしまう。でもうちの畑はそんなに重たい機械は入れません。だから土が元気で軟らかいんです。」
雑草が生えていると、他の農家が嫌う虫を発生させてるといわれるので、草取りもマメに行っています。
また隣接した畑から肥料や農薬が来ないように垣根もしているとのこと。
なるべく自然のまま、周りとのトラブルも避けるため、杉本さんの茶畑は一部を除いてなるべく山の上にあるとのこと。
「山の畑はもっと雑草がすごいんですよ。もう休耕地かと思われるような見た目です。」
抜いた雑草は、そのまま畑の栄養に。
次に案内された山の上の畑には、清清しい緑が広がる中にありました。
また、お茶の木よりも倍くらいの雑草が、ぼうぼうと生えていました。「この草がね、あっという間に育ってしまうんですよ。でもね、うちのお茶の木は深く根を張っているから、雑草の根とは比べ物にならないんで、こんな育った草でも簡単に取れるんです。」と、杉本さんは話ながら雑草の茎を片手でもって、ゆさゆさ揺らして引っこ抜きました。太くて大きな雑草は、いとも簡単にあっさりと抜けてしまいます。
「とにかく雑草の育ちがいいので、やっと終わった!と、始めた場所をみると、もう草が育ち始めてしまってるんですよ」と苦笑いする杉本さん。
草取りと同時に杉本さんは木の剪定もおこなっています。お茶の木はほっておくと脇の枝がどんどん伸びて根を張り、芯の木よりも強く育ってしまうのだそうです。芯の木を本当の意味で強くする為、杉本さんは草刈機などを使って、丁寧に剪定をしていきます。
それがカナリ重労働だとのこと。その証拠に立派なお茶の木の枝は、草刈機の歯も壊してしまうほどなんだそう。
「こうしてやっても、お茶はすぐに結果がでないんですよね。結果が出るのに3年は懸ります。」斜面になっている畑は見晴らしもよく、太陽が当たれば相当の暑さになることが想像できました。大変な暑さの中、重労働の草取りと剪定。結果はすぐには出ないけれど、手をかけ続ける。他のお茶農家が誰もやらないことを、杉本さんはもう18年も続けているのです。
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夏場の草取りを行う、ご長男鋭悟さん |
草取りは、畑と人間にデトックス効果あり。
杉本さんの説明を聞いた後、立派に生い茂った草を、体一杯使ってどんどん抜いていきます。雑草の幹は両手で抱えるほどの太さでも、ちょっと揺らして引っこ抜くと簡単に取れます。
「本当にこの作業は人海戦術なんですよ。頭数がいると違うなあ。」と何度も杉本さんが言います。夏の暑い日に杉本さんと鋭悟さんだけで行うこの作業が、どれだけきついのか体感させていただきました。
杉本園さんの草取りの面白いところは、取った草を集めて捨てたりしなくてもいいこと。抜いた傍から畑に置いていきます。
「こうすると明日にはあっという間に干からびて、畑の肥料になるんです。うちの畑にとって、草は肥料になり、虫は畑を良くしてくれる先生なんです。だから草や虫は退治する必要は一切ないんですよ。」
杉本さん曰く、畑に生息するもの全てが、お茶作りには欠かせない存在になっているのだとおっしゃいました。大汗をたくさんかいて作業をしていたら、畑がきれいになると同時に、なんとも爽やかな気持ちになってきました。「日頃のストレスなどが、草取りした汗で流れていきますよ。僕も仕事で行き詰ると畑に入り草取りします。これはおすすめのデトックス方法だと思いますよ。」ご長男の鋭悟さんが嬉しそうに話してくれました。
芳樹さんの思いは、脈々と息子さんたちへ
今年の春、荒茶の放射線測定量が基準値以下でも検出されてから、杉本園ではなるべく昨年のお茶を販売することにしました。
でも、「やっぱり杉本園の美味しい新茶が飲みたい。」という声も頂くとのこと。「お客様に選らんでもらいたい」と、ウェブサイトにはお客様が自由に選べるようにしました。杉本さんのお茶に根強いファンがいて、そのつながりの深さを感じずには要られません。
「今年は昨年のお茶を売って、来年からはどうするかな〜って感じですね。出ないって確証もないですし、ただ、自分達にできることをするまで、です。」と、自然に話す鋭悟さん。
来年の状況の見通しすらも付かないけれど、自分達のやってきたことを曲げるつもりは無い、それが自分達にとって自然なことだからという、かたくな過ぎず、かといって何かに譲歩するわけでもない、18年近く無農薬無施肥でお茶を作ってきた杉本園のあくまでも「自然な」かたち。それを確立させてきた、当主の杉本芳樹さんのスタイルというか後姿は、脈々と息子さんに受け継がれているんだなあと言うことも、話の節々で静かに伝わってきました。
本来なら新芽がたくさん出ているはずの茶畑や、草が大きく生い茂っている、杉本園ならではの畑は、金谷地区に広がる普通の茶畑と打って変わった姿ではあっても、どこか整然としているように見えました。
杉本さんご一家の、「自分達が自然に良いと思うものを、お客様に飲んでもらう」という、とても正直な、また、切なる思いにお茶の木々たちも応えようとしているように見えたからかも知れません。

杉本園のほうじ茶に、 医王の舞玄米を合わせました
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