私たちの使う素材には「顔」があります。

今回の生産者
vol.21
美しい棚田から、こだわりのお酢づくり 飯尾醸造・五代目飯尾彰浩さん
日本一のお酢「富士酢」で有名な「飯尾醸造」は京都駅から更に電車で2時間ほどの日本三景天橋立で有名な「宮津」という美しい海に囲まれた町にあります。5代目飯尾彰浩さんに「ちょうど田植えの時期です。いらっしゃいませんか?」とお声かけ頂き「勿論行きます!」と二つ返事で喜んで行ってまいりました。
過疎化の村の棚田を守ろう
「飯尾醸造」さんといえば、お酢を作るのに必要なお米を毎年自社で無農薬で栽培、収穫し、純米酒仕込みを経てお酢を造るという、日本でももうあまり見ることの出来ない本物のお酢屋さんなのです。宮津駅から車で30分ほど山を登ると眩しい緑の木々や草花に囲まれたそれは美しい棚田が見えてきます。何故平地ではなく標高450mの人里離れた山奥の棚田で無農薬米造りを実践されているかというと、他の田んぼで使った農薬や生活排水が流れこまず、寒暖の差もあり上質のお米ができるという利点があるからとのこと。それに過疎化がすすむ村で後継者が少なく、このままでは危うくこの美しい棚田が荒地へと変わってしまう、文化や美しい棚田の景観を守りたいという願いから農家の皆さんに協力していただき、飯尾さん家族や社員のみなさんが一緒になって米造りを行っているのです。飯尾さん一家の声かけがなければこの美しい景色は日本に存在しないのかと思うと本当に頭が下がります。山中にあるペンション「自給自足」の自然派弁当をお昼に頂き、この土地の旬素材の味を満喫した後、(本当に美味でした。)早速田植え用長靴を履いていざ田んぼへ!

米作りから、お酢作りまで
飯尾醸造の米作りから酢造りまで全て担当されている伊藤さんと副杜氏の今井さんが田植えに関しての説明をしてくださいました。ここでもこだわり満載です。まず、飯尾醸造さんでは無農薬で米を栽培するのでもちろん除草剤も使いません。ではどうするかというと、なんと伊藤さんが手にしているのは幅1メートル程の黒い紙ロール。これが化学薬品を使わない再生紙だというのです。この再生紙は2ヶ月ほどで水で分解され、質のよい肥料にもなってしまうというからあっぱれ。さらに寒暖の差の激しい山中でも温度を保ち、更に保水もしてくれるという優れもの。小さな田んぼでは機械も入れることが出来ませんし、形も一定ではないので全て手で行っていきます。このロールを田んぼに敷きながら25cm間隔に稲を植えていくのですが、前ではなく、後ろへ後ろへ進みながらどっぷり田んぼに浸かった足を引き抜きながらの作業はもう予想外の大変さです。途中長靴が脱げるはで散々ご迷惑をかけながらも必死に行いました。蛙の卵やおたまじゃくし、大小さまざまな蛙たち、色とりどりの昆虫やアメンボ。この田んぼがいかに健康かを実感しながらの作業でした。ちょっぴり曲がってしまったけれど、自分で植えた稲の列を見ながら、お米を大事に食べることと秋にまた会いに来ることを勝手に誓いました。
昔ながらのお酢造り
最高な天気に恵まれた宮津「飯尾醸造」を訪ねての旅2日目は蔵見学です。夏を思わせる快晴に恵まれ、海の青さ、天橋立もくっきりと浮かび上がって見えます。改めて「ここって京都だよね?」と不思議に思うほどです。(京都に海があるイメージがなかったもので・・・。)5代目彰浩さんに歴史を感じる由緒正しい蔵の中に案内して頂くと、なんとも甘い濃厚なお酢の香りに迎えられます。発酵蔵の9000ℓ入るタンクが6台ズラリと並ぶ姿には圧巻。お酢は空気がないと発酵できないので、適度な通気性を保つ木蓋や昔ながらのむしろを何枚も重ねて蓋がしてあります。(季節によってむしろの枚数をかえるそうです。)他の多くのメーカーは「いかに早く、多くお酢を生産するか?」を中心に考えるので自然発酵など待ってはいられません。タンクの底から空気を送りこんで速醸法でお酢を作るのがほとんど。48時間もあれば大量にお酢ができてしまいます。飯尾醸造はというと全く逆。棚田で作った無農薬米から米麹をつくり、お酒のもと(酒母)から酒を造り、1ヶ月かけてもろみを醸し、その後酢酸菌の膜を浮かべて発酵をスタートさせます。このままゆっくりと3〜4ヶ月自然発酵させます。はしごを登り、発酵中の富士酢のタンクを覗くとアルコールから酸に変わる際に起きる自己熱を発して湯気が立っています。彰浩さんに聞いたところ「40度が適温です。これより高すぎても、低すぎてもあかんのです。」とのこと。一日に何度も蔵人が温度を測り適温に保っているのです。
明治26年より守り続けるお酢作り
こだわりゆえのまろやかなお酢
発酵が終わってもまだ出荷ではありません。最低でも8ヶ月かけて熟成させます。ここでもまた飯尾醸造のこだわりを発見してしまいました。おそらく日本でこんなことをしているお酢屋さんはないだろうと確信できる手間ひまのかけ方を・・・。なんと熟成に入ったお酢のタンクからとなりの空のタンクに1ヵ月に1回、最低8回は全部移し変えるというのです。作業表を見せていただくと、紅芋酢は20回行われていました。「なぜこんな大変な作業をわざわざ?」と聞くと「まろやかさに違いが出るんです。ワインでいうデキャンタージュですね。空気を十分に含ませてあげることによってうちにしかないお酢ができあがるんです。」とはんなり京都弁でおっしゃる彰浩さん。どこのお酢屋さんがここまで手をかけているというのでしょうか?つまり、飯尾さんのお酢ができるまでを計算すると米作りからお酢ができるまで最低2年半もかかって出荷されているってことになります。飯尾さんのお酢が何故どれもとげとげしさがなく、まろやかで美味である理由がよーくわかりました。

何もいらない美味しさ
そうそう、念願だった青森で無肥料、無農薬でりんごの栽培を成功された「木村さんのりんご」を使った「にごりりんご酢」の発酵状況も確認できました。(いい香りでした。)なんとこのお酢、一滴も水を加えずりんごの水分のみで醸造しているとのこと。りんごがあまりにも元気すぎて発酵におそろしいほど時間がかかるそうです。このりんご酢の最高の味わい方を教わりました。「トマトにかける」それだけ。塩もオリーブオイルもなにもいらない。説明のいらない美味しさです。是非お試しください。飯尾醸造を訪ねた2日間。飯尾さん一家、杜氏、蔵人、農家のみなさんが飯尾醸造のお酢同様、とげのない優しい方々によって信念を込めて造られていることを知ることができました。造り手の想いと手間ひまが日本一のお酢の一滴を作りだすのでした。

美しい棚田でお米から作られた純米富士酢

 
飯尾醸造・純米富士酢

明治二十六年の創業よりかわらぬ製法で造った「純米 富士酢」は飯尾醸造の看板商品です。 オンラインショッピングでお買い求めいただけます。こちらからどうぞ。

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