私たちの使う素材には「顔」があります。

今回の生産者
vol.2
すずき味噌店4代目 鈴木徳則さん
カフェの食材、顔のみえる生産者の素材を使うことは、あたりまえですが、できる限り自分たちで作ったものを使いたい、そんな思いから、毎日使う味噌を仕込みに山形県白鷹町すすぎ味噌店を訪ねました。
4代目である鈴木徳則さんは、東京農大醸造学科を卒業し、東京の漬物会社へ就職しました。1年たっても腐らない漬物を売ることに疑問を感じはじめたそうです。そのとき、ふと「今、流行のたべものは、100年後は残っているかどうかと考えたとき、100年後もきっと残るであろう日本の伝統食材味噌を作る家業を継ぐ決心をしました。」そして故郷である山形県へ戻りました。
本来は、味噌屋ではなく「麹屋」として創業されました。麹屋は、味噌屋などに「麹」を売る仕事をしていました。麹屋? といっても東京で暮らす私たちは、ピンときませんが、 麹を売るだけでなく、味噌の「委託醸造」も長年、続けてきました。「委託醸造」というのは、材料を持ち込み、仕込んでもらうシステムです。今でも、地元では、「物々交換」の習慣が残っているそうで、「委託醸造」というシステムも「物々交換」から発したのかもしれません。
一般的に味噌は、大豆、米麹、塩、水が原料となります。それぞれ、一番大好きな素材を使おうと、大豆は松田のマヨネーズの松田さんの畑で収穫された完全無農薬大豆。塩は、インカの天日塩。米は、医王の舞に決まり。さっそく、鈴木さんの指導のもと、味噌仕込みをはじめました。あらかじめ、鈴木さんが仕込みされていた米麹がいきなり登場。カビのように米のまわりにふわふわとした胞子がぼっちり。「麹旨いですよ、うちの子たちは、おやつに食べるから、胃腸が丈夫なんですよ。」鈴木家の健康法発見しました。麹を食べてみると、甘味があり旨い。麹を手でもみほぐし、圧力鍋で柔らかく煮た大豆と、塩と一緒にあわせ、よくすり合わせます。ここで食べても、麹と大豆の甘味がおいしい。おいしい素材で仕込むとどの段階でつまみぐいしても旨い! ということもわかりました。こうして1年以上寝かせた味噌は、発酵が完成したら、味噌蔵から冷蔵庫室へ移して管理され、必要量を出荷していきます。大量生産される味噌は、早いもので3週間で速成醸造されます。

もちろん、麹の力だけでは、発酵しないため、発酵促進剤を加えているのですが、残念ながら、原材料への記載の必要はありませんでした。まっとうに作っている人が浮かばれなかったのですが、2003年4月から食品衛生法の改正により、100%国産大豆を使用していないものは、「国産大豆使用」と表記できないことになりました。米麹以外のものを使用する場合も記載する義務があるようにやっと改正されました。

鈴木さんは、全ての工程を手作業で行います。それは、手でしかわからない感触を大切に考えるからです。味噌の発酵状態のチェック、農大卒の鈴木さん、いくらデーターをとってみても、人間の舌のセンサーには勝てないと言われていました。鈴木さんが添加物を使用せず、本来の作り方にこだわるのは、地元のお年寄りの厳しい味チェックがあるからだそうです。「この地方、夏は、冷たい味噌汁を暑気払いに飲むのですが、冷たい味噌汁は、味噌の味があったかいものより、よくわかる。発酵がきちんとできていないと、たちまちクレームがつきます。」いくつかの種類の味噌を水で溶いて飲んでみると驚きました。ダシも何も入れないのに、それだけでおいしいのです。そして、温かい味噌汁では感じられない微妙な発酵状態もはっきりとわかるのには、びっくりしました。

麹の出荷量は年々減少しているそうです。味噌や漬物を自宅で作らなくなったからなんだそうです。ヨーグルトと同じように、味噌には、腸内を健康に保つ働きがあります。山形を後に、日本の伝統食材をあらためて、見直すことができました。東京の中心で手前味噌を使うカフェ? そこまでやるか。そこまで、やりたかった。今回、仕込んだ味噌は、来年の春、蔵出しをして、皆様にもお分けできるかと思います。 どうぞ、お楽しみに
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